この記事で解決できる悩みや疑問
- 人的補償や金銭補償の仕組みを知りたい
- 人的補償とトレードの違いを知りたい
オフシーズンになると、プロ野球選手の移籍ニュースが飛び交います
けれど、意外と仕組みを正しく理解している人は、少ないのではないでしょうか
そこで、この記事では野球の人的補償や金銭補償について詳しく解説していきます!
この記事の内容
- 人的補償とは/金銭補償とは
- トレードと人的補償の違い
- 過去の人的補償選手一覧
- 岩瀬式プロテクト
この記事を読むと、人的補償や金銭補償について理解が深まり、今以上にオフシーズンの移籍ニュースに興味をもてます!
では、解説していきます
人的補償とは/金銭補償とは
人的補償_金銭補償とは、FA宣言により選手が他球団に移籍した場合、戦力低下の補償として移籍先球団から選手や金銭を獲得できる制度のことです
人的補償_金銭補償の成り立ち
まず、FA宣言について説明しましょう
FA宣言とはFA権を用いて、移籍を宣言することです
FA権とは
Free Agent権の略で、選手の1軍登録が7~8年を超えると、選手は自ら所属球団を離れ、新たにどの球団とも契約を結ぶことができる権利
※FA権がないと、自分の意志で球団を離れることはできません
FA権を得るには、所属球団で活躍していないといけません(1軍登録期間が必要なため)
つまり、FA宣言をする選手というのは所属球団にとって主力の選手です
主力の選手は、多くの球団がたくさんお金をだして獲得しようとします
選手も自分を評価してくれる球団(お金を多くだしてくれる球団)にいこうとします
そうすると、お金をたくさん持っている球団ばかり強い選手が揃ってしまい、野球リーグ全体に問題が起こります
そこで1993年FA制度が始まると同時に、FA宣言により選手が他球団に移籍した場合、戦力低下の補償として人的補償_金銭補償が始まりました
人的補償_金銭補償のしくみ
人的補償はFA宣言をした全ての選手で発生するわけではありません
所属球団の年俸1位〜10位までの選手がFA宣言をした場合のみ、人的補償が発生します
11位以下の選手がFA宣言をした場合には、人的補償は発生しません
また、1位〜10位の中でもランクが分かれています
年俸1位〜3位がAランク、4位〜10位がBランクです
このランクによって、人的補償と金銭補償の額が決められています(なお、外国人選手の年俸は年俸順位に含めません)
ランク | 年俸順位 | 補償 |
---|---|---|
Aランク | 年俸1位〜3位 | 選手1名+年俸の0.5倍の金銭 |
Bランク | 年俸4位〜10位 | 選手1名+年俸の0.4倍の金銭 |
Cランク | 年俸11位〜 | なし |
また、人的補償にいい選手がいなかった場合には、選手をもらわない代わりに金銭補償を増やすこともできます
ランク | 年俸順位 | 補償 |
---|---|---|
Aランク | 年俸1位〜3位 | 年俸の0.8倍の金銭(選手は獲得せず) |
Bランク | 年俸4位〜10位 | 年俸の0.6倍の金銭(選手は獲得せず) |
Cランク | 年俸11位〜 | なし |
人的補償選手の選び方
所属選手がFA宣言をして、移籍が決まった場合、所属元球団が、移籍先球団の選手から人的補償選手を選ぶことができます
ただし、誰でも自由に選べてしまうと、FA選手を獲得する球団がなくなるため、移籍先球団は人的補償の対象外にする選手を28人選ぶことができます
このことをプロテクト枠と言います
所属元球団は、プロテクトされている28人と、直近のドラフトで獲得した選手以外から人的補償選手を選びます
トレードと人的補償の違い
よく混同される制度としてトレードがあげられます
「トレード」と「FA+人的補償」の一番の違いは、移籍する選手が所属元球団に所属しているかどうかです
- トレード
球団に所属している選手同士を、球団が交換する制度 - FA+人的補償
球団から自ら自由契約になった選手(FA)が他球団と契約し、その補償として人を渡す制度
英語で考えるとよりわかりやすいです
トレードが「交換」という意味、FAが「自由行為者」という意味です
過去の人的補償選手一覧
今まで、人的補償で移籍した選手は31名います(※2021年オフまでの記録)
一覧を見ていきましょう
年度 | 人的補償選手 | 移籍先 | FA選手 |
---|---|---|---|
1995年 | 川邉忠義(巨人) | 日ハム | 河野博文 |
2001年 | 平松一宏 | 中日 | 前田幸長 |
2001年 | ユウキ | オリックス | 加藤伸一 |
2005年 | 小田幸平 | 中日 | 野口茂樹 |
2005年 | 江藤智 | 西武 | 豊田清 |
2006年 | 吉武真太郎 | 巨人 | 小久保裕紀 |
2006年 | 工藤公康 | 横浜 | 門倉健 |
2007年 | 赤松真人 | 広島 | 新井貴浩 |
2007年 | 福地寿樹 | ヤクルト | 石井一久 |
2007年 | 岡本真也 | 西武 | 和田一浩 |
2010年 | 高濱卓也 | ロッテ | 小林宏之 |
2011年 | 藤井秀悟 | DeNA | 村田修一 |
2011年 | 高口隆行 | 巨人 | 大村三郎 |
2012年 | 高宮和也 | 阪神 | 平野恵一 |
2012年 | 馬原孝浩 | オリックス | 寺原隼人 |
2013年 | 一岡竜司 | 広島 | 大竹寛 |
2013年 | 藤岡好明 | 日本ハム | 鶴岡慎也 |
2013年 | 鶴岡一成 | 阪神 | 久保康友 |
2013年 | 脇谷亮太 | 西武 | 片岡治大 |
2013年 | 中郷大樹 | 西武 | 涌井秀章 |
2014年 | 奥村展征 | ヤクルト | 相川亮二 |
2016年 | 金田和之 | オリックス | 糸井嘉男 |
2016年 | 平良拳太郎 | DeNA | 山口俊 |
2017年 | 尾仲祐哉 | 阪神 | 前田大和 |
2017年 | 高木勇人 | 西武 | 野上亮磨 |
2018年 | 内海哲也 | 西武 | 炭谷銀仁朗 |
2018年 | 竹安大知 | オリックス | 西勇輝 |
2018年 | 長野久義 | 広島 | 丸佳浩 |
2019年 | 小野郁 | ロッテ | 鈴木大地 |
2019年 | 酒居知史 | 楽天 | 美馬学 |
2020年 | 田中俊太 | DeNA | 梶谷隆幸 |
2021年 | 岩嵜翔 | 中日 | 又吉克樹 |
FAで移籍した選手は、自ら自由契約となり球団と交渉し、入団を決めます
一方、人的補償選手で移籍が決まった選手は寝耳に水の状態です
球団からプロテクトされなかった悔しさもあるでしょう
しかし、過去に元の球団では活躍できていなかった選手が、人的補償で移籍後に活躍したケースもあります
例えば、2007年にヤクルトに移籍した福地選手。西武ではほとんど活躍できていませんでした
移籍後は、2008年からレギュラーに定着し、2008/2009年と2年連続盗塁王に輝いています
2005年に小田選手が中日に人的補償で移籍した際には、落合監督が「小田が外れていると思わなかった、大もうけといっていい」と言ったことも有名です
実際、小田選手はその後、中日で活躍しました
人的補償での移籍にはドラマがあるのです
岩瀬式プロテクト
もう一つ、人的補償にまつわる有名な言葉があります
それは「岩瀬式プロテクト」と呼ばれているものです
2018年中日が日本ハムの大野奨太選手をFAで獲得した際、日本ハムが人的補償の選手を選ぶことになりました
そのとき、日本ハムは、中日の抑えの切り札である岩瀬選手がプロテクトされていないことに気がついたのです
中日のプロテクト漏れだったのですが、人的補償として指名された岩瀬選手は「人的補償になるなら引退する」と言って移籍を拒否しました
通常、人的補償の移籍に関して、選手には権利がありません
しかし、移籍した後にすぐ引退されてしまうと、球団も困ります
結果、日本ハムは岩瀬選手を指名することを止め、中日は金銭補償のみで大野選手を獲得することになりました
このように引退をチラつかせて、人的補償の指名を防ぐ方法を「岩瀬式プロテクト」と呼び、当時大きな話題となりました
ただし、その後、「岩瀬式プロテクト」を用いた人はまだいません
まとめ
今回の記事では、野球の人的補償や金銭補償を解説しました
最後にポイントをまとめます
ポイント
- 人的補償とは、FA宣言により選手が他球団に移籍した場合、戦力低下の補償として移籍先球団から選手を獲得できる制度
- 移籍先球団はプロテクト(人的補償の対象外にする)選手28人を選ぶことができる
- 引退をチラつかせて、人的補償の強制的な移籍を防ぐ方法を「岩瀬式プロテクト」と呼ぶ
オフシーズンにどの選手がどこに移籍をするかも、プロ野球の楽しみ方の一つですね!
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